『ククルス・ドアンの島』から見始めて、よくもまぁそれから37年もガンダムマニア(正確には富野アニメマニア)をやっているものだと、我ながら感心するが、ちょうど『ガンダム』はその前後、シャアによるガルマの謀殺編が終わった直後で、次の砂漠編までのインターバルにあり、各話がアンソロジー仕立てになっていた構成でもあり、次の第16話『セイラ出撃』から改めて見始めても、なんとか追いつけるという構造で成り立っていた。

当初戸惑ったのが、シャアは既に一時退場していた状況だったが、「デブ(リュウ・ホセイ)が、大食漢でなければ、怪力でもない」「ニヒル(カイ・シデン)がアムロに対して『今回はお前にしてやられたが、次はお前には負けないぜ』とか張り合うキャラじゃない」「チビ(ハヤト・コバヤシ)が、とんちや天才的頭脳を活かしたバトルサポートをする、コメディリリーフじゃない」等々が、ある意味いきなり驚きであり、しかし、それはまさに、当時の筆者がどれだけ既成の記号論(その多くは、長浜忠夫監督作品によるインプリンティングなのだが……)に染められた偏見で、子ども向けロボットアニメを把握していたかの証明なのではあるのだが……。

“そこ”は、あえてスポンサーや代理店を騙しておかなければいけないといった、富野・安彦(良和)コンビの共犯思想が迷彩になっていたのかもしれない。それだけ(仮面の悪役・シャアを含み)ガンダムのキャラクターデザイン一覧は、過去のロボットアニメやチームヒーロー漫画の定石そのままのビジュアルで構成されていた。

アムロ「ブライトさん、ジオンの兵士が港に入って行きました」
ブライト「なんだと?」
パオロ「ホワイトベースの全てのハッチを閉じろ! 銃を持てるものは……うっ」
ブライト「誰でもかまわん! 前方より接近中のジオンの兵を狙撃しろ。急げ」
アムロ「!! 撃つぞ! 撃つぞ! 撃つぞォー!」
シャア「人間みたいな小さな目標にそうそう当たるものじゃない。ムサイ! 受信できるか! 敵が出て来るぞ。レーザー・ラインにのせて私とスレンダーのザクを第一種装備で射出しろ!」

なにはともあれ、では、女性のアニメファンの方がアンテナが鋭く、フットワークも軽いし偏見も少ない柔軟性に溢れているという前提論で見ていった中で、「男女分け隔てなく」ティーンズを取り込まなければ、『ガンダム』があれだけの社会現象など起こせるはずも道理もないという大前提論に戻った時、では、なにを以て男性ティーンズファンをガンダムは取り込めたのかと考察する時、それは『ガンダム』の、ジャンルとしてのグラウンドデザインとして、往年の海外ドラマ『コンバット』(原題: Combat! 1962年)のように、『ヤマト』とは違った意味での、男子好きする「戦場アンソロジードラマ」の一面を、第8話『戦場は荒野』や第14話『時間よ、止まれ』などが描き機能していたからなのだろうと、今となっては推測できる。

しかし、男子ファンを一気に取り込んだ主要素は、放映終了後に発売展開が始まった、バンダイによるガンダムのプラモデル、通称“ガンプラ”の大流行がトリガーになるのだが、ここの論はこの連載の先に回したいと思う。

次回『シン・機動戦士ガンダム論!』。
とうとう放映開始された『機動戦士ガンダム』は、徐々に思春期の少年少女の心をつかんでいった!
君は、生き延びることができるか。

次回「『シン・機動戦士ガンダム論!』第6回『機動戦士ガンダム』オンエア開始(後)

(フィギュア再現画像特殊効果協力 K2アートラクション)

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事