チョイスは簡単。「潜水艦モードの艦橋」と「飛行モードの主翼」を、それぞれ引き出した状態にするのだ。設定的には矛盾する状態だが、これを見て「どこかで見たデザインだ」と思わないオタクはいないだろう。それも、「東映動画時代の『サイボーグ009』を愛した世代」もしくは「特撮オタク」であれば。

独自変形を試みたドルフィン号

そう、この、飛行モードの翼と、潜水艦モードの艦橋が両立する劇中にはないモードは、見た目そのまま、昭和の円谷プロの特撮番組『マイティジャック』の主役万能戦艦、タイトルそのままのマイティジャック号(以下MJ号)と、シンクロニシティのように酷似しているのだ。

1968年の特撮番組『マイティジャック』
マイティジャック号 KONAMI ムービーセレクション版

試しに両者の立体物を、同じ角度から撮影して並べてみよう。

独自形態ドルフィン号サイドビュー
マイティジャック号サイドビュー

どうだろうか?
平成版が作品のグラウンドデザインからターゲットにした「昭和レトロテイスト」がフォルムにマッチ感を増幅させている。また、ドルフィン号の潜水艦モード環境の背後にスライドする、飛行モード時の上面ブロックが、MJ号の艦橋の背後のスロープと、ここも酷似しているのだ。

ドルフィン号スロープ
マイティジャック号スロープ
両者を同じアングルから見た比較

確かにそれは、パクリやオマージュではなく、平成アニメ版が抽出した「東映動画版が公開された時代のテイスト」が、まさしく『マイティジャック』というコンテンツと同窓生だからではないだろうか?
『サイボーグ009』東映動画版は、無印の映画1作目が1966年、ドルフィン号が登場する映画2作目が1967年、TVシリーズが1968年4月から始まっている。
『マイティジャック』放映開始は1968年4月で、TV版の『009』と全く同時のスタート。
その、完全な同窓生ともいえるMJ号と、30年以上の時を経た平成版のドルフィン号が酷似しているというのは、むしろなにか、分からない人には絶対分からない価値を感じ取れたような感覚に陥りそうになる。

調べてみると、平成版はメカデザインも、紺野氏が担当することによって、ビジュアル面での様々なバランスを統一したのだろうが、紺野氏のイマジネーションの中に、『マイティジャック』があったのかどうかは、聞くだけ野暮というもので、ここではあくまで筆者の「妄想」でこの一致を片付けておくことが大事だろう。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事