前回は「出渕裕ロングインタビュー13 出渕裕と『恐怖劇場アンバランス』と『怪奇大作戦』と」

――思ったのですが、市川森一さんって、僕や出渕さんが、敬愛する形での「保守の人」だったのではないだろうかと。

出渕 そうですね。そういうところはあったかもしれないです。

――コンビを組んでいた山際監督は、完全に左派の人だったのですが、そういった関係性や、時代が左派文化だったという。

出渕 そこはちゃんと、お互いにリスペクトしあえていたんですね。中道の中の左と右とかね、穏健保守と穏健左派とかは、全然大丈夫だったりしますよ。

――「ネトウヨとパヨク」は違いますね。

出渕 どちらもめんどくさい印象はありますね。というか、やはりネトウヨと呼ばれてる人たちは本当の保守じゃないと思うし、今、安倍政権がやってること(政策)って、左翼政権が本来やりそうな、ある意味社会主義的でもあるしね。数十年前だったら、そのころの左翼政党がやりたがってたようなことばかりなんで、なんでネトウヨの人たちは支持するのかなあ、って。同じ様に政策的にはそうなんだから、左翼の人はなんで支持しないのかっていうのもあったり。どちらも政策ではなく、うわべの態度や物言いだけで良し悪しを決めてるのかもしれないなあ。どちらからも、そんなことはない!って言われそうだけど。

――今の時代。「日本人は郷土愛を保って、民主主義と弱者を守り、憲法を守ろう」っていう、一番保守的なスローガンを掲げている政党が、唯一日本共産党だという今の永田町って、絶対にねじれ現象が起きてる気がするんですよね。

出渕 友人で脚本家の大野木(寛)君が言った話で。彼が「俺は右翼だよ。右翼だから、俺は(選挙で)共産党に(票を)入れる」って言ってました(笑) 「俺は医者の息子だからバリバリ右なんだけど」っていうんだけど、医者の息子って関係ないじゃん、お前バリバリってほど右翼じゃないじゃんって思うんですけどね。そんな感じで大野木君と僕はどちらかというと、穏健保守と穏健左派みたいなもんだから友人でもあるし仕事も一緒にできていいんだけど、極端に左右に別れた人たちは難しいんですかね? 僕なんか、そういうのはこっちに置いといて、相手の考えは互いに尊重し合いながら人間関係は形成できるもんじゃん、って思うんで。  

――僕などは若い時からパンクが好きだったり、バリバリ左派だったんですが、当時街宣右翼の大物で、赤尾敏さんって人がいたんですけど、あの人の街頭演説が痛快絶妙で、毎回丸の内とかに、パンク仲間と見物に行ってましたね。

出渕 赤尾敏さんですよね。言ってることが、一本筋が通っている「反米右翼」でしたね。

――そうなんですよ。本質的な保守って、反米であるべきなんじゃないのかなーっていう……。

出渕 日米協定とか占領下のような基地問題とか、どうにかしろよあんたら、っていう感じで(笑) 

――70年代までは、そうした時代背景もあって、保守派の市川森一さんの作劇が純粋なファンタジーに向かったのではないかと思っています。

市川森一氏がファンタジーを書いていた『コメットさん』

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