――氷川氏には足元にも及びませんが、自分もこうして『ガンダム』富野アニメを論ずるまでは、むしろ『ウルトラマン』(1966年)の評論を続けていたこともありまして。脚本家の市川森一さんとも、メッセージのやり取りをさせて頂いたこともありました。

出渕 僕も市川森一さんは対談させていただいたことがありました。『リュウ』(80年代のSF雑誌)に載ったんですよ。その時に誘ってくれて(収録現場に来て)構成をしてくれたのが、僕の大好きなお兄さん的人である中島紳介(アニメ・特撮の評論家)さんなんで。で「出渕君。市川森一さんと」「えぇえ! 行きたいです〜〜!」って。あんまり人と会っても緊張しないタイプなんですが、市川さんリスペクトなやつだったんで、あの時はガチガチだったなあ(笑) あとやはり中島さんだったか、いや氷川さんかな?そちらから富野さんと映像で対談というかインタヴューというかな事をしない?と声かけられてしたこともあったんですよ。『ライディーン』のLD-BOXだったかな。そういえば、この間誰だったかに言われたのが、その時の映像を見たのか「富野さんって、出渕さんと話していると(話しとか)砕けてますよね」って。まぁそうだよね。だって『ライディーン』の話で二人で話してたって「これはねぇ。渕っちゃんだから話すけど!」って感じで(笑) そんな、いいんですかコレ(カメラ)回ってますけど、そのネタ話してるのは俺だけじゃないですよっていう(笑) そういう意味ではあれはこちらが思ってる以上に貴重なものかもしれない。

――「出渕さんにだけ話す」って。LD-BOX買った人には全員に筒抜けじゃないですか(笑) LD-BOXが売れた枚数だけ、人数が知るという(笑)

出渕 まぁアレはなんか、YouTubeで上がんねぇかなぁと思ってるんですけど(笑) でまぁ、市川(森一)さんのやつで、最初に話していたときに、『傷だらけの天使』(1974年)の話をちょっとしたんですよ。で、僕やっぱり、市川さんのホン(脚本)持ってて、読んでたりするんですけど、『傷だらけの天使』の最初の一行目(放映は第7話『自動車泥棒にラブソングを』)に書かれた……。

――はい。冒頭の「鳩が糞をたれた」という一文ですね。

伝説のドラマ『傷だらけの天使』

出渕 僕はアレを最初、カラスだと読み違えてて。「カラスが糞をたれた」だと思い込んでいて。(その時)市川さんはそのト書き自体忘れていたらしくて。僕は「アレはつまり“カラスの糞のような二人”があそこ(ビル屋上のプレハブ)に住んでいる。そういう暗喩としてのト書きかなぁと思ったんですけど」って言ったら、市川さんが「ちょっと待っていてください」って奥に行って(自著を調べて)「あ、本当だ。書いてますね。でも出渕さん、これはカラスじゃなくて鳩なんです。鳩が平和の象徴で、そこからドロップアウトした、糞のようにパージされた二人、という意味なんです」と言われたんですよ。

『傷だらけの天使』メインレギュラーの4人

――だからなんでしょうかね。1983年に大和書房から、『傷だらけの天使』の市川森一脚本集が発刊されたんですけれども、その後書きの一行目が、その「鳩が糞をたれた」というト書きにに関する言及でした。

出渕 同じことを市川さん、ちょうどその頃朝日新聞のコラムに連載してて、後日、僕がそれを読んだ時、今話した内容が載っていたんですよ。「あ! 市川さん、僕と話したことと同じことを書かれてる!」って感激して。逆にあの時対談させていただいて、市川さんに僕がいいネタを提供できたみたいで良かったなって。あと、市川脚本の単発ドラマ『受胎の森』(1985年)の話もしたなあ。あれは体外受精がテーマだったんですけど、緒形拳が職業アニメ監督の役で出ていて。もしかしたら市川さんアニメに興味あるのかと。それで、いつかアニメの脚本とか書かれたりするのをみたいです!とか。市川さんは「境界線」上で試される人間というのをテーマにしてらっしゃる感じがします!とか。それには「言われてドキッとしました」と市川さんが答えてくれたり。でもまぁ、本当なら特撮の、もっとお前だったら『ウルトラマンA』(1972年)の話だろ!って話なんだけど、あんまりそっちの話はしなかったですね。『花の乱』(1994年)大好きですっ!的な話ばっかりで(笑) 

次回は「出渕裕ロングインタビュー13 出渕裕と『恐怖劇場アンバランス』と『怪奇大作戦』と」

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