OVA版がもたらしてくれた、僅かばかりの「良かったこと」

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そこには、原作にあった「70年代ならではの空気」もなければ、吉田竜夫直系の優等生的画風でありながら、惜しげもなく残酷描写が繰り広げられる、奇妙で甘美な感覚」もなく「(原作の当時としてはリアルタイム流行を取り入れた)寒いダジャレのもつ独特の痛々しさ」もなく(あ、原作者が一瞬出て来てそれをやったが)OVA版が目指しただろう「不屈の野獣性」も「あぁ最近だとありがちだねぇ」で済んでしまう程度には、まぁ「薄いファンなら納得するんじゃないか」という出来だった。
もちろん、OVAであり(この時期高まりかけていた)「往年の名作アニメ化」であれば、そもそも薄いファン等ターゲットには入っていない筈であるし、普通のアニメファンであれば、財布の紐を開くところまで行き着く理由もない。

結果的にこのビジネスビジョンは大失敗という数字的成績を残したが、昭和時代からのファンに言わせれば「至極まっとうな結果」であったと言わざるを得ない。
唯一のメリットと言えば「マーチャンダイジングが発生して、様々な『ワイルド7』グッズが発売された」ことであろう。
もちろん筆者も有頂天状態で、旧アオシマ系スカイネットから販売された、1/6サイズの飛葉ちゃん以下『ワイルド7』メンバーのフィギュアを買いそろえたし、当時クノー工業というメーカーから発売された(実際にバイクに乗る際に使用できるJIS仕様の)『ワイルド7モデル・ヘルメット』『ワイルド7マーク・ステッカー』を購入してきて、官給品中古ショップで揃えた警察用皮コート等を駆使して、ワイルド7の(今でいうコスプレ)制服一式を揃えてバイクに乗ったものだった。

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上野の中田商店で、警察官給品がまだまだ買えた頃のお話

もちろん、肩にはホルスターを吊り下げて、OVA化便乗商品として当時モデルガンとして発売されたモデルガンメーカー最老舗の『コルトウッズマン 飛葉モデル』を収納していた(ちなみにこの『コルトウッズマン 飛葉モデル』だが、そもそもMGCが過去に発売していたウッズマンのカスタムで商品化されたのだが、なにせベースがキャップ火薬発火排莢システムの、由緒正しいモデルガンゆえ、発火時には一番バレルにショックと圧力がかかりやすい構造。そもそものロングバレル版であれば、そこはちゃんと配慮された構造だったのだが、飛葉モデルとなればバレルは短く切り落とさねばならない。しかし、そのまま切り落とすと今度はバレル強度が保てなくなるため、仕方なく『特殊バレル』という謎設定で、切り詰めたバレルの外周を包むパイプが被せられ、妙にバレルが太くて短い「変なウッズマン」になっていた。なので見栄えだけを優先する時は筆者は当時、プラモデルで販売されていた、東京マルイのウッズマンを、バレルを鋸で切り落としていたものを装着していた)
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 そうなのだ。『仮面ライダー THE FIRST』(2005年)以降続々と送り出された、ヒーロー作品のリメイクがそうであったように「映像作品の出来はどうであっても、リメイクを口実に、現代の技術で名作のアイテムが発売されればそれでいい」を、『ワイルド7』はビジネスビジョンとして10年先駆けてしまったのかもしれない。
 だから筆者は今日も「OVA版の商品」を身に着けて「お前がやれぬことならばぁ♪」と、テレビ実写版の主題歌を口遊みながら、「飛葉ちゃんの生き様」をなぞり続けるのである。
 ……え? 瑛太主演の実写リメイク映画……?

そんな物ぁ知らねぇなぁ!

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この項、お終い

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