オープニングは最高だ。
小比類巻かほるの主題歌『WILD』は70年代っぽさこそ希薄なものの、原作第一巻冒頭の「銀行強盗退治」の派手な開幕を音楽面で彩り、そこでワイルドメンバーの全員が、個々の活躍と共に紹介される最高の出だしを見せる(なので、この開幕シーンで全メンバーが見せ場を持たなければいけないので、原作とドラマ版では描かれた「一般車両を通行止めにするハレハレ(交通整理)」は描かれない)。

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OVA版は、原作の『野性の七人』『バイク騎士事件』を上手く連続ものにアレンジして、原作ファンも納得した仕上がりに……なってないのだなぁこれがまた。

確かに物語自体は原作の2エピソードを「上手くなぞっている」ように見える。
ココナッツゲームからMCプロ、そこに(展開を前倒しして)バイク騎士を絡ませ、スムースに二つのエピソードを絡ませている、脚本段階での巧みさは認めよう。
原作では(当時興業スポーツとして一躍脚光を浴びていた)キックボクシングだった競技を、あえて女子プロレスモドキのキャットファイトへ変更したのも「画面に華がない」「望月漫画の魅力の一つである『アメコミ画調の女性』の出番が、原作の初期2エピソードでは皆無なので、その要素を組み込む」ための対処だと、理解もしよう。
薄幸のオリジナルヒロインを出したのも、これも決して原作の雰囲気を妨げてもいない。

しかし。
しかし、このOVA版『ワイルド7』は、そこでそもそも「妨げられる」程には、原作の持っていた空気感や時代性、考証がしっかり突き詰められていないのである。

確かにこのアニメでは、いろいろと「わざとらしく70年代を意識」している部分は多い。
「街角の看板の描写」「公園の売店」「転がる瓶のコカ・コーラ」「自動車の年式」「街角のテレビ売り場に『カラーテレビ』と宣伝文句が書いてある」「劇中でのテレビ画面が白黒」等々、コンテレベルで細かい配慮がなされている。
それは上記したバイクのエキゾーストノートと同等に、拳銃の描写にも拘られている。

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昭和っぽい公園の売店(?)の店先描写
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これみよがしに転がる瓶コーラ
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登場するパトカーも、車種は一応70年代
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え……?70年代なのに、まだ白黒テレビ?

しかしそれだけでは「ただの70年代ディティールの単発再現」だけであって「『ワイルド7』が描かれ、『ワイルド7』が闊歩した、『ワイルド7』世界の再現」ではない。
贅沢や無理難題を言うのではない。そもそもワイルドファンは「そういう物」しか待っていなかったし、いざ作られるのであれば「そういう物」を期待するし、「それが無理ならわざわざ作らなくてよい」というところまで、頑固と拘りと意固地さが発酵してしまったのが「『ワイルド7』マニアだ」なのだ。

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ある意味そこは、鉄道オタクやミリタリーファンとも一致する「厄介さ」なのかもだが、『ワイルド7』の看板を背負って商売をするのであれば「そういう厄介な連中」を相手に、財布の紐を解かせなければ、どれだけ頑張ってもへつらってみせても「失敗」なのだ(実際がどうであったか。このOVAが続編への伏線残しやキャラをいやらしく残しながらも、結局当初からリリース予定だった、VOL.2までしか制作されなかった事実が物語っている)。

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